『ヒミツ』第6巻 45 引き算思考1
45 引き算思考1
あたらしい時代に適応していこうとするとき、
大事にしてほしい原則がある。
「引き算思考」よ。
世の中では、なにかあたらしいことをしようとするとき、
足し算で行われることが多い。
あたらしい制度を作る、あたらしいやり方を加える、
あたらしく予算を確保する、新製品をプラスする、等々。
別に悪くはないのだけれど、
少なくともそれと同等のなにかを止める、
できればより大きなものを削減することで、
それを実行してほしい。
過酷な生存競争を生き延びてきたプロセスのなかで、
人間は本能的に失うことへの恐怖感を発達させてきた。
だから、スクラップ&ビルドのビルドはどんどん進むんだけれど、
スクラップ部分には抵抗が大きい。
非効率で旧態依然とした部門や仕組みや制度が、
硬直化したまま温存されやすいのよ。
担当者たちからすれば、せっかく習熟度も上がってらくらくこなせ、
それなりに愛着ももっている仕事を取り上げられるわけだから、
当然に反発も大きくなる。
でも、それらが残っていると、企業はあっという間に
競争力を失っていくわ。
だらだらと旧態依然をつづける企業は非常に多い。
その方が圧倒的にラクだからね。
足すのは容易だけれど、引くのはけっこうむつかしい。
企業幹部たちの手腕が問われる場面。
反発し、文句を言う担当者たちをなだめつつ、すかしつつ、
あたらしいチャレンジへとどう誘(いざな)うか?
このことが重要なのは、それがそのまま、
Xデーにむけた体制作りにもなっている、という点にある。
需要が瞬間蒸発したとき、半年ほど、企業収益は激減する。
さらにその後、2年半ほどは大混乱がつづく。
当然に、生活防衛のため、人々はモーレツな買い控えを続けるわ。
御社の財務体質や組織構成は、この3年間を耐えられるように
なっていますか?
この問いの答えが、「引き算思考」なのよ。
あたらしい適応をしてくときは、引き算で。
シンプルに、簡素に、減らしながら、よ。