『ヒミツ』第6巻 45 引き算思考1

2023.09.25 その他

45 引き算思考1

あたらしい時代に適応していこうとするとき、

大事にしてほしい原則がある。

「引き算思考」よ。

世の中では、なにかあたらしいことをしようとするとき、

足し算で行われることが多い。

あたらしい制度を作る、あたらしいやり方を加える、

あたらしく予算を確保する、新製品をプラスする、等々。

別に悪くはないのだけれど、

少なくともそれと同等のなにかを止める、

できればより大きなものを削減することで、

それを実行してほしい。

過酷な生存競争を生き延びてきたプロセスのなかで、

人間は本能的に失うことへの恐怖感を発達させてきた。

だから、スクラップ&ビルドのビルドはどんどん進むんだけれど、

スクラップ部分には抵抗が大きい。

非効率で旧態依然とした部門や仕組みや制度が、

硬直化したまま温存されやすいのよ。

担当者たちからすれば、せっかく習熟度も上がってらくらくこなせ、

それなりに愛着ももっている仕事を取り上げられるわけだから、

当然に反発も大きくなる。

でも、それらが残っていると、企業はあっという間に

競争力を失っていくわ。

すでに、時代の激流はすぐそこまで迫っているというのに

だらだらと旧態依然をつづける企業は非常に多い。

その方が圧倒的にラクだからね。

足すのは容易だけれど、引くのはけっこうむつかしい。

企業幹部たちの手腕が問われる場面。

反発し、文句を言う担当者たちをなだめつつ、すかしつつ、

あたらしいチャレンジへとどう誘(いざな)うか?

このことが重要なのは、それがそのまま、

Xデーにむけた体制作りにもなっている、という点にある。

需要が瞬間蒸発したとき、半年ほど、企業収益は激減する。

さらにその後、2年半ほどは大混乱がつづく。

当然に、生活防衛のため、人々はモーレツな買い控えを続けるわ。

御社の財務体質や組織構成は、この3年間を耐えられるように

なっていますか?

この問いの答えが、「引き算思考」なのよ。

あたらしい適応をしてくときは、引き算で。

シンプルに、簡素に、減らしながら、よ。