『ヒミツ』第5巻 43 STYLE7
43 STYLE7
最後に、ひとつだけお願い。
ポジティブ思考を、押し付けないでほしいの。
前向きなのはいいことだし、幸せなのもステキなこと。
でも、それとおなじくらい、後ろ向きなよさも、不幸の魅力もある。
多くのポジティブ思考の背後には、実は「損得」が隠れているし、
損なのか得なのかは、陣営によっても価値観によっても変わる。
変わるどころか、真逆になることも少なくない。
ネガティブな指摘のおかげで検討し直したら、
致命的な見落としが見つかったので、その瞬間実はポジティブに変わったとか。
保守傾向が強いので手を出さなかったら、後のレッドオーシャン化を免れたため、
実はとても建設的な意見だった等、いろんな可能性がある。
「損得」の場合ですら、よ。
大事なのは、多様な指向性にどう折り合いを付けながら
共存していくか、そこからなにを学んでいくか。
筆者の場合は次のようにしている。
①会社の意思決定は、ポジティブな指向性の強い者が行うが、
その前段として広く意見は聞く。
②全体マネジメントは、ポジティブ8:ネガティブ2くらいで。
③チームごとの運用は、比率を考慮せず現場のメンバーに任せる。
④社員教育ではポジティブな指向性を重視するが、
優劣ではないことも同時に伝え、個々の指向性&自決権を重する。
基本、その人がやりたい業務をやりたい方向性でやってもらう。
(業績への悪影響が懸念される場合は、マネジメントが介入)
⑤その上で、ご自身の選択の結果は受け取ってもらう。
当然に、厳しいものも。
要は履行をもとめつつもバランスを取る、
厳しいことも言いつつ全体としては中庸を保つ、ってこと。
あたりまえのように響くかもしれないけれど、
多くの会社では実現できていないんじゃないかしら。
金融を頂点とした強欲資本主義が蔓延しているので、
プロ経営者を自称する短期利益の追求者のもと、
社員たちはみなノルマをこなすのに必死。
現代ビジネスで、「損得」の外にも配慮するるなんて、
なかなかむつかしい。
グリーンなんとか、SDGs、脱炭素、環境にやさしいって、
「損得の外」という仮面をかぶった「究極の損得」にもしばられずに、
となるとさらに。
でも、これを読んでいるあなたになら、できる。
このタイミングで、変わることができる。
足りないくらいで、ちょうどいい。
「ちょうどいい」って、「足りてない状態」のこと。
創意工夫で、考え方次第で、埋めていける余地のあること。
埋めていく行為こそが、仕事のやりがい、人生の生きがい。
問題視しなければ、問題たちは霧散するけれど、
問題がなければ、解決する喜びを味わえない。
問題が山積しているってことは、生涯ずっと飽きずに遊べる
おもちゃを支給してもらった、というラッキーな事態。
あなたがずっと主人公でいられる専用劇場を用意してもらった、
ってことよ。
押し付けない人には、そうした可能性が開けてくる。
ビッグ・ウェーブとともにね。