『ヒミツ』第5巻 43 STYLE7

2023.05.25 その他

43 STYLE7

最後に、ひとつだけお願い。

ポジティブ思考を、押し付けないでほしいの。

前向きなのはいいことだし、幸せなのもステキなこと。

でも、それとおなじくらい、後ろ向きなよさも、不幸の魅力もある。

多くのポジティブ思考の背後には、実は「損得」が隠れているし、

損なのか得なのかは、陣営によっても価値観によっても変わる。

変わるどころか、真逆になることも少なくない。

ネガティブな指摘のおかげで検討し直したら、

致命的な見落としが見つかったので、その瞬間実はポジティブに変わったとか。

保守傾向が強いので手を出さなかったら、後のレッドオーシャン化を免れたため、

実はとても建設的な意見だった等、いろんな可能性がある。

「損得」の場合ですら、よ。

大事なのは、多様な指向性にどう折り合いを付けながら

共存していくか、そこからなにを学んでいくか。

筆者の場合は次のようにしている。

①会社の意思決定は、ポジティブな指向性の強い者が行うが、

その前段として広く意見は聞く。

②全体マネジメントは、ポジティブ8:ネガティブ2くらいで。

③チームごとの運用は、比率を考慮せず現場のメンバーに任せる。

④社員教育ではポジティブな指向性を重視するが、

優劣ではないことも同時に伝え、個々の指向性&自決権を重する。

基本、その人がやりたい業務をやりたい方向性でやってもらう。

(業績への悪影響が懸念される場合は、マネジメントが介入)

⑤その上で、ご自身の選択の結果は受け取ってもらう。

当然に、厳しいものも。

要は履行をもとめつつもバランスを取る、

厳しいことも言いつつ全体としては中庸を保つ、ってこと。

あたりまえのように響くかもしれないけれど、

多くの会社では実現できていないんじゃないかしら。

金融を頂点とした強欲資本主義が蔓延しているので、

プロ経営者を自称する短期利益の追求者のもと、

社員たちはみなノルマをこなすのに必死。

現代ビジネスで、「損得」の外にも配慮するるなんて、

なかなかむつかしい。

グリーンなんとか、SDGs、脱炭素、環境にやさしいって、

「損得の外」という仮面をかぶった「究極の損得」にもしばられずに、

となるとさらに。

でも、これを読んでいるあなたになら、できる。

このタイミングで、変わることができる。

足りないくらいで、ちょうどいい。

「ちょうどいい」って、「足りてない状態」のこと。

創意工夫で、考え方次第で、埋めていける余地のあること。

埋めていく行為こそが、仕事のやりがい、人生の生きがい。

問題視しなければ、問題たちは霧散するけれど、

問題がなければ、解決する喜びを味わえない。

問題が山積しているってことは、生涯ずっと飽きずに遊べる

おもちゃを支給してもらった、というラッキーな事態。

あなたがずっと主人公でいられる専用劇場を用意してもらった、

ってことよ。

押し付けない人には、そうした可能性が開けてくる。

ビッグ・ウェーブとともにね。