『ヒミツ』第5巻 11 選択の時1
11 選択の時1
少し、企業人にむけて話しておくわね。
各企業、「選択の時」を迎えることになるから。
日本の少子高齢化は世界最速で進んでいく、って聞いたことあるでしょ。
韓国もかなりの急ピッチなので、厳密にどこが世界一なのかは重要じゃない。
社会の在り方が根本的に、しかも急速に変わっていく、
そのペースの速さは、一般的な人間の意識の変化速度を大きく超えている、
ってことだけわかっていれば十分。
介護業界の人手不足や、社会保障費の増加など、
避けては通れない難問たちがいよいよ具体化していくわけだけれど、
少子化や高齢化が進むその反対側で、
もうウルトラ級の変化である、って点はさらに重要なの。
生産年齢人口=現役世代は、消費がもっとも活発な世代でもあり、
人手不足と並行して、「劇的なマーケットの縮小」が
あらゆる分野で加速していく。
お客がどんどんいなくなると、なにが起こると思う?
必然的に、倒産が増えるわね。
提供者も減るのでやがて需給のバランスは回復に向かう、
って単純な話じゃない。
現代のビジネスは、必ずしも人が人にサービスや物を販売するわけじゃない。
設備/機械が提供している場合も、多々あるでしょう?
もともと機械化って、少ない手間と人数でたくさんの人に
対応できるよう設計されてるし、技術の進化も速い。
設備や機械のキャパってね、すぐには減らないのよ。
それどころか、AIの進化等で技術革新はさらに加速していくため、
逆に「キャパ余り」はいっそう深刻化していくの。
たとえば、筆者の会社が属する通信業界では、
ネットワーク設備はいったん打ったら、その後5年も10年も
継続稼働させていく前提で作られているわ。
客が減っても、同じペースで設備が減るわけじゃない。
当然、コストは変わらないわけだから、遊ばせておくよりは
赤字でも稼働させた方が被害は少ない。
つまり、ゼロよりはマシって、
原価を下回る「ダンピング受注」に走る企業が
かならず現れるようになる。
すると、それに引きずられる形で、周辺企業たちも
値を下げていかざるをえなくなる。
インフレが昂進する中、原材料費も人件費も
上昇していくのに、よ。
かくして、業界全体が、勝者のいない
「スーパーレッドオーシャン」と化していくの。
体力のない小規模事業者から順に倒れていき、
生き残った企業でも、品質を維持していくための
再投資がむつかしくなっていく。
行くとこまで行き、決着が着くまで、
このスーパーレッドオーッシャン化の動きは止まらない。
止められない。
自社がこの流れに巻き込まれないために、
なにをやっておくべきか?
経営者だけでなく、幹部たちだけでなく、
社員みなが一丸となって先回りする必要があるの。
残り2年半の間に。
・・・でも、多くの企業はその認識をもっていない。
多くの企業人たちは、自分の頭で考えていない。
なんやかんやいって、日本は豊か。
なんとなく、生きてはいける。
いまのところ、会社も存続できてる。
万一失業しても、ある程度保険でカバーできるし。
すでに、兆候はあらゆる産業分野で出来(しゅったい)して
いるのだけれど、危機感をもっている人は非常に少ないのが現実。
大量絶滅パターンね。
恐竜たちとおんなじ。
あなたの会社では、どう?