『ヒミツ』第4巻 41 特徴2
2023.02.15
その他
41 特徴2
東京での外部研修のときだった。
学んだ技法を実際に使ってみましょう、ということになった。
小グループに分かれ、替わりばんこにロールプレイングを行うのだ。
ケイコは、奇妙な参加者がいるのに気づいた。
外見はいたって普通だ。
受け答えも普通。
ちょっと顔色が青白いが、病気というほどでもない。
笑いもすれば、相槌も打つけれど、どこか生気がない。
暗いのではなく、影があるわけでもなく、逆に影や暗さが前提にするところの、
人が本来的に持つ個性がない、もっと言うと、そもそも人間性がない。
話すときもこちらを向いてはいるけれど、目の焦点が定まってないというか、
ちゃんと見ていないというか、機械的に視線を向けているように感じられる。
あらゆる言動に、「精神性の発露」がないのだ。
マユミもそのことに気づいているようだった。
ケイコは友人と2人で参加していたのだが、直感はマユミの方がはるかに鋭い。
高校時代の同級生で、彼女は、昔から見えたり聞こえたりしていたらしい。
休憩時間に、マユミの方から話しかけてきた。
「2~3人、入ってるわね。」
彼女が言うには、メインの魂がなんらかの理由で機能不全に陥っており、
その隙を突くように、別の「筋のよくない魂」が乱暴にも入り込んできている、
だから人間としての統合的な人格の運用に支障をきたしている、とのことだった。
「マジで?」
マユミにはいつも脱帽だ。
こうした世界があるということに気づき、覚醒のきっかけを作ってくれたのも、
彼女だった。