『ヒミツ』第4巻 24 インフレのその先に2
このままハイピッチでインフレが進んでいったら、
将来どうなっちゃうんだろう、ってみな不安に思っている。
特に所得が少ない層は、収入における生活費の割合いが高いので、
なおさら切迫度が高い。
でもね、インフレは別の使い方もできる。
コロナもそうだったんじゃないかしら?
急にお出かけできなくなって、あれも自粛、これは三密、
それはディスタンスって、いろんな行動が制限されていた。
でも、だからこそ、会議が減り、接待も減り、
面談はリモートで済ませ、下調べも購入もネットでポチっと。
庭いじりをはじめた人、趣味の手芸を再開した人、
お料理にチャレンジする人、ペットを飼いはじめた人など、
自分にとってほんとうに大切なものへと、人々の行動は向かい始めた。
ある意味、コロナのおかげよね。
けっこうな数の人たちが、ライフスタイルを転換させる
きっかけとして、コロナ対策禍を使ったのよ。
インフレも同じ。
あたらしいライフスタイルへと転換するきっかけとして、
一部の人々は使いはじめているの。
大量生産&大量消費を前提として、慣れ親しんだこの文明全体が
組み上がっているので、いきなりそんなこと言われても、
人間の意識は急に変わったりしない。
変えられない。
だから、ある種、半強制的に生き方を転換するため、
インフレを受け取り直している人々がいるわけ。
彼女たちは、いろんな物を手放しはじめた。
流行遅れにならないよう、毎年買い替えざるをえないワンピ。
タンスにあふれかえっている、もう2年も来てないブラウス。
使われることのない、棚いっぱいの小物たち。
遠慮なく豊かさをたっぷりと受け取っていいのだけれど、
もういらなくなった「豊かさの残滓たち」を後生大事に抱え込んでいると、
身動きしづらくなる。
場所も取られるし、埃もつくし、掃除も管理も大変。
思い切って、「残滓たち」を手放していくと、
その空いたスペースに、空いた時間に、あたらしい豊かさたちが
また入ってきてくれる。
残滓たちには感謝して、次の人にあげたり、処分したり、
どんどん旅立ってもらうの。
「いままでありがとう、たのしかったよ」って、ねぎらいながら。
物だけなじゃない。
人間関係や仕事、役職、担当業務、所属など、すべてに関してよ。
公私ともに、もう情熱を感じなくなったモノたち/コトたちを、
どんどん手放していくの。
過去の清算なんかじゃない。
それこそが、ミライ作り。
ちょっと勇気のいる場面も多いと思うけど、アカルイミライの
ためなんだから、思い切って手放しちゃう価値は十分にある。
手放すからこそ、次が来てくれるのよ。
人間って、引かれる後ろ髪がふさふさだから、
ちょっと厳し目くらいにやる方が、ちょうどいい。
あらゆるものを、シンプルに整えていくの。
インフレを、「アカルイミライ」として受け取り直すのよ。