『ヒミツ』第4巻 2モヤ2

2023.01.08 その他

『ヒミツ』第4巻 2モヤ2

引っ越しに合わせ、車も買った。

田舎道は除雪も行き届いてはいないだろうからと、四駆を選んだ。

特別な悪路走破性はなく、ただの生活四駆にすぎないけれど、

ケイコにはそれで十分だった。

想定外に、行動圏が一気に広がったからだ。

軽食と飲み物さえあれば、どこにでも行けた。

こんな道があって、ここにつながっていて、その先は・・・と、

あたらしい発見、あたらしい景色、あたらしいプチ冒険が

ケイコを待っていた。

息を飲むような絶景ではないけれど、ちょっと開けた日当たりのいい場所に

車を止めてはコーヒーを飲み、おやつを食べ、仮眠をとる。

エンジンをかけっぱなしにしていても、エアコンを付けっぱなしでも、

気にするところの人目など皆無だ。

週末のたび山々に分け入り、田舎道をのんびり車で流す生活がはじまって、

ケイコは気づいた。

モヤの正体について。

それは、人々が無意識に発散している「気」なのではないか?

ふとそう思った。

人々の「気」が集合し、都心を、ビルを、社内を覆っていたのだ。